コロナとインターネット教材
ちょっと前にTwitterで、たくさんの方に反応いただいた話をBlogに改めて書きます。
2月にとある講演会を聞きにいきました。
その塾では、授業を完全にタブレットのAI教材で行い、先生はというとチューターのような、
その動画を見ても分からない子に対して、個別に働きかけを行うような役割で、
正確にはわかりませんが、一人の先生で10~20人の生徒を見るような形の授業を行っておりました。
通常そのような講演会では「うちの塾はこうやって成功を収めています!」みたいな話が多いと思いますが、
その塾は珍しく失敗談も交え、話をしてくださったので、性格の悪い私は、耳をそばだてて聞いておりました。
その中で特に面白かったのは、「成績が下の生徒はAI教材でも上がらなかったので、塾として受け入れるのを辞めた」という話。
映像授業や遠隔授業は機能しなかった!?
ちまたではコロナウィルスと相まって映像授業や動画学習、遠隔授業などの流れが盛んです。
AIの活用、教育の効率化、教師の負担軽減、ピンポイントで苦手克服、、、
ではなぜ成績が上がらなかったのか?
AIは白黒ハッキリしています。
理解度が不足しているなら、ハッキリ言って中学生でも、小学生内容の復習を要求してきます。
ですが、それは致し方ないこと。
なぜなら小学生段階での土台の上に、中学生内容の理解を積み上げなければ、結局時間が経てば忘れてしまう“丸暗記”になってしまうからです。
例えば、中学一年生で習う「おうぎ形」は、小学生範囲の「円」の考え方を必要とします。
円の求め方が分からなければ、公式暗記マンになるしかありません。
となると、公式が分からなくなれば、当たり前ですが求めることは出来ません。
このように必ず「瞬時に理解しているかを見極め、仮に理解していないと判定されたとするならば、容赦なく前学年まで戻されてしまう」AI教材は、
ある程度長期スパンでの地道な勉強を要求し(今までやってこなかったわけですから)、
それを“成績が上がらない”と捉えてしまう保護者さんから、「塾を辞める」という選択を取られる事が多かったのだとか。
だから「ある一定の、入塾を判断する点数を決め、そこに至らない生徒は入塾を受け入れない」という選択を取り始めたのだそうです。
このことに関する是非はどうあれ、塾は「成績を上げなければならない。」という大命題を抱えておりますので、
自塾のキャパシティに合っていない全ての生徒を、無尽蔵で受け入れるよりかは、幾分誠実な判断だと思った次第でございます。
だが、何より俺がここで言いたいのはそんなことじゃねぇ!!!
タブレットや動画教材は、
『勉強苦手な生徒が、自分のペースで勉強できて、効率よく復習が出来て、塾や学校が抱える少子化や人手不足をまるっと解消できる夢のようなツールになる!』
とは言いがたい。ということです。
それらの教材は、対面での授業以上に、その子自身のモチベーションやリテラシーを必要とします。
対面における授業でさえおぼつかない生徒が、より能動的に学習する必要のあるAI教材に変わったところで、
最初5分だけ見て、即爆睡が関の山だと思うのです(もちろん買って2週間くらいは見違えるようにやるかもしれませんが)。
コロナウィルスで学校がなくなり、ある程度学校があったおかげで引っ張られていた層がごそっと下に落ち、情報格差、というよりかは意識格差、知的好奇心の格差がより広がるのではないかと懸念しております。
もちろん正しく使えば、効率的で効果のある学習が期待できるのでしょう。
それには諸手を挙げて賛成です。
ですが、悲しいかな、私に質問をしてくる生徒に「持っているスマホで調べてみなよ!」というと、
「う~ん、めんどくさいんでいいで~す(笑)」
と言われることの多い身からすると、まだまだ塾講師、もとい一人の大人として言わなきゃいけないことたくさんあるぞと思うわけです。
おわりに
人手不足の塾ギョーカイ。
これからまだまだAI授業は発達し、そのような塾もどんどん増えてくるでしょう。
しかしながら、言葉巧みにエーアイだ、アクティブラーニングだ、横文字を並べられても、
それだけで解決できるわけでもなく、勉強のやり方に関してネチネチと言い続ける私のようなオッサンも、
5Gの時代に同居しなければならないのかもしれません。